入試過去問 / 東京大学 2026年度 数学(理科)

第1問 三角関数が入れ子になった定積分の評価

微分定積分不等式加法定理

出典東京大学 令和8年度 第2次学力試験 前期日程 数学(理科) 第1問

問題文は東京大学が公表した試験問題からの引用です。解答・解説はtelvia演習ラボが作成したもので、東京大学が公表したものではありません。

問題

(1) 関数 の区間 における最大値 および最小値 を求めよ。

(2) (1) で定めた に対し,次の不等式を示せ。

ヒントを見る

(1) は の符号がすぐには分からない。 自身の増減を調べられるか。(2) は加法定理で2つの項に分けると、片方は何かの導関数になっている。残る を (1) の で書き直すと、計算できない部分はどれだけ残るか。

解答・解説

方針

(1) は をもう一度微分して を示し、区間の端の値を求める。(2) は加法定理で分けたあと、 を と書き直す。多項式の部分は積分し、 の部分は (1) の結果ではさむ。

解答

⓪ 発想(どう考え始めるか) (1) は導関数の符号を調べるだけだが、 は見ただけでは符号が分からない。そこで をさらに微分して、 自身の増減を調べる。

(2) の被積分関数は の中に が入っていて、原始関数が求まらない。加法定理で と の2つに分けると、片方は導関数の形になって積分が になる。残った は(1) の を使うと「多項式 」と書ける。多項式の部分は計算でき、計算できない の部分だけを (1) の結果ではさめばよい。

① (1) の符号を調べる。

これを とおくと

(等号は のときだけ)なので は増加し、 である。したがって で 、 で となり、 は で最小値 をとる。

よって で、等号は のときだけだ。 は で増加する。

② (1) 最大値と最小値。 は増加するので、最大は右端、最小は左端でとる。

は奇関数なので、 にもなっている。

θyO1−1M−M
y=f(θ) のグラフ(縦方向を大きく拡大)。f は増加し、f(0)=0 なので θ と f(θ) はいつも同じ符号になる

③ (2) 加法定理で分ける。

公式加法定理

とおくと

④ 後ろの項の積分は になる。 合成関数の微分で だから

よって とおくと

⑤ を で書き直す。 の定義を について解くと

を代入して を掛けると

⑥ 多項式の部分を積分する。

公式半角の公式

2回使うと となる。 から まで積分すると の項は消えて

したがって、残りを とおくと

⑦ を と ではさむ。 は を動く。この範囲で次の2つが成り立つ。

  • は増加で だから、 と は同じ符号になる。よって 。
  • (1) より なので、。

とすると

これを から まで積分する。 のグラフは面積 の山が つ並んだ形なので、 である。よって となり、

が示された。

まとめ:(1) は の符号が見えないので、もう一度微分して の増減を調べた。(2) は加法定理で分けたうえで、積分できる多項式の部分と、できない の部分に分けた。 の部分は「 と同じ符号で、大きさは 以下」という情報だけではさめる。

発展。 を と展開する式(マクローリン展開)を使うと、 はおよそ である。これで を見積もると となり、実際の値 に近い。なお、この積分 の値はベッセル関数とよばれる関数 を使うと と表される。

答

(1) 、 (2) 解答を参照(証明)

別解

別解:(1) の を半角の公式で示す。 もう一度微分しなくても、 を使うと

と書ける。単位円で中心角 の弧の長さ は、同じ中心角の弦の長さ 以上なので、(等号は のときだけ)。これを に使うと、中かっこの中は 以上になり、 が分かる。

という不等式が、「弧は弦より長い」という図形の事実から出てくることが見える。

ポイント

  • は、もう一度微分すると符号が分かる。
  • は の導関数なので、 から までの積分は 。
  • は増加で だから 。これを として積分する。

よくある間違い

  • を「 だから負」と判断してしまう。 の分があるので、この理由では符号は決まらない。
  • 上からの評価で と絶対値を付け忘れる。 のところでは成り立たず、そのまま積分すると上界が になってしまう。
  • を と同じ だと思い込む。半角の公式を2回使って と計算する。