数学I / 集合と命題

調和数は整数にならない

最難関編背理法偶奇の論証

問題

を2以上の整数とするとき、 は整数でないことを示せ。

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分母たちの中で「2で割れる回数」に注目する。いちばん多く2で割れる数は、 以下にいくつあるか — もし2つあったら間に何が挟まるはずか。その「ただ1つ」の項だけが、通分の世界で仲間はずれになる。

解答・解説

方針

n 以下の整数のうち、2で割れる回数が最大のもの(2^m)はただ1つ。これが急所だ。和に「2^{m−1}×(1〜n の奇数の積)」を掛けると、1/2^m の項だけが半整数になり、他の項はすべて整数になる。整数+非整数は非整数なので、和は整数になり得ない。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 通分して分子を調べたいが、分母の最小公倍数は複雑だ。そこで、2で割れる回数(2のべき)だけに注目する。

以下で最大の2のべきを とすると、 以下でただ1つ。 の2倍 はもう を超えるし、 の奇数倍 はさらに大きいからだ。

この「仲間はずれの1項」 が急所になる。うまく選んだ数を掛けると、この項だけが整数にならない。背理法はそこで決まる。

重要 以下で2で割れる回数が最大の数 はただ1つ()。「整数の和+整数でない1項」は整数でない

① 仲間はずれを特定する。 となる をとる( なので存在)。 なら、 の2で割れる回数は 以下である。もし 回以上割れたら、 の倍数。 なら となって矛盾する。

② 掛けて整数性を仕分ける。 から までの奇数すべての積とし、 を和に掛ける。 の項は、()と書けるから

は整数だ( はその奇数を因数にもつ)。一方、 の項は

で、 は奇数だから整数でない。

③ 背理法で締める。 が整数と仮定すると、 は整数のはず。だが②より で、整数でない。矛盾。よって は整数でない。

まとめ: 「最大の2のべきはただ1つ」という一点が、証明の全体重を支えている。素朴に通分するのではなく、うまい倍率 を設計して1項だけを仲間はずれにする。発想の芯は、集合の中の「唯一の極端な要素」に目をつけることだ。

発展 — 一歩先へ。 同じ論法を磨くと、もっと強いことが言える。 は「約分し尽くすと分母が偶数」の分数になる。さらに、(項が2つ以上の連続区間の和)も、すべて整数にならない。「区間内で2で割れる回数が最大の数はただ1つ」が、そのまま通用するからだ。

証明( 以下で最大の2のべき がただ1つであることを使う背理法)

別解

最小公倍数で一気に通分する(定番の別ルート)。 掛ける数を自分で設計する代わりに、 から の最小公倍数 で普通に通分してもよい。

の素因数2の個数はちょうど ( 以下の最大の2のべき から来る)。すると各分子 のうち、奇数になるのは の項ただ1つで、他はすべて偶数だ( の2の個数が 未満なら、 に2が残る)。

分子の総和は「奇数1個+偶数たち」で奇数。分母 は偶数()。奇数を偶数で割っても、2は約分できないから整数にならない。

掛け算 を設計する本解と、最小公倍数で通分する本ルート。どちらも心臓部は同じ「 の唯一性」で、装いだけが違う。分子の偶奇という1ビットに情報を圧縮するのが、この証明の見どころだ。

ポイント

  • 以下の最大の2のべき は唯一。
  • を掛けると の項だけ (非整数)。
  • 整数の和+非整数 → 全体は非整数(背理法)。

よくある間違い

  • 小さい で実験して「整数にならなそう」で終える。実験は予想であって、すべての の証明にはならない。
  • 「最大の2のべき」が2つ以上あると思ってしまう。 の次に2で 回割れる数は で、もう を超えている。
  • 掛ける数 を天下りに出す。「全項を整数化したいが、 だけはわざと半端に残す」という設計意図を一言添える。