数学I / データの分析
箱ひげ図(五数要約)の読み取りと正誤判定
問題
A組・B組(各40人)のテストの得点について、箱ひげ図から次の値が読み取れた。
- A組: 最小値 、第1四分位数 、中央値 、第3四分位数 、最大値
- B組: 最小値 、第1四分位数 、中央値 、第3四分位数 、最大値
次の(1)〜(4)のそれぞれについて、「正しい」「正しくない」「これらの値だけからは判断できない」のどれかを理由とともに答えよ。
(1) 四分位範囲はA組のほうが大きい。
(2) A組には 点以上の生徒が 人以上いる。
(3) B組には 点の生徒はいない。
(4) 平均値はB組のほうが高い。
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問われているのは計算力より『その図から確実に言えるか・言えないか』。武器は2つ — 四分位数は人数を約 ずつ区切る位置であること、そして箱ひげ図には平均値の情報がないこと。各主張を1つずつ吟味しよう。
解答・解説
方針
箱ひげ図の読み取りで問われるのは、計算力ではなく『その図から確実に言えることと、言えないことの線引き』だ。
使う知識は2つ。①四分位数はデータをおよそ ずつに区切る位置だ。②箱ひげ図には平均値の情報がない(五数要約は順位の情報だけで、値の分布の形までは決めない)。
各主張を『五数要約から論理的に導けるか?』と1つずつ確かめていく。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 箱ひげ図の読み取りで問われるのは、計算力ではない。「その図から確実に言えること」と「言えないこと」の線引きだ。
使う知識は2つ。①四分位数はデータをおよそ ずつに区切る位置。②箱ひげ図には平均値の情報がない(五数要約は順位の情報だけ)。
各主張を「五数要約から論理的に導けるか?」と1つずつ検問していく。導けなければ、正解は「判断できない」だ。
(1) 正しい。 四分位範囲は だ。
よってA組のほうが大きく、正しい。
(2) 正しい。 『 だからだいたい 人』で済ませず、きちんと詰めてみる。A組の は、小さいほうから 番目と 番目の得点の平均だ。もし 点以上の生徒が 人以下だとすると、 番目の得点は 点未満となり、 番目の得点はそれ以下なので、2つの平均が になることはありえない。よって 点以上の生徒は、 番目から 番目の 人以上いる。正しい。
(3) 正しい。 B組の最大値は 点なので、 点を超える生徒はいない。よって 点の生徒はおらず、正しい。最大値・最小値はひげの端から直接読める、いちばん素直な情報だ。
(4) 判断できない。 ここがこの問題の核心だ。箱ひげ図(五数要約)からわかるのはデータの順位の区切りであって、平均値はわからない。中央値はB組のほうが高い()が、たとえばA組に 点近い高得点者が何人もいれば、平均値はA組のほうが高くなることも十分ありえる。『中央値が高い → 平均値も高い』という推論は成り立たない。中央値は順位しか見ておらず、平均値は値の大きさに引きずられる、という2つの代表値の性格のちがいが、そのまま答えになっている。
発展 — 一歩先へ。 箱ひげ図は「順位の要約」であって「値の分布の完全な記録」ではない。同じ箱ひげ図を持つ、姿の違う分布は無数にある。この限界を知っていることが、資料の読み手としての成熟だ。
ヒストグラムと箱ひげ図の対応を問う問題(どのヒストグラムがどの箱ひげ図か)も、今日の「言える・言えない」の線引きの応用である。
(1) 正しい (2) 正しい (3) 正しい (4) 判断できない
別解
「判断できない」を確信を持って答えるための、強い方法がある。反例を自分で作ってしまうのだ。
(4)の平均値なら、こう考える。A組の五数要約を保ったまま、中身の自由な部分を動かせるか。
たとえば、中央値 と第3四分位数 の間にいる8人( 番目から 番目)は、五数要約に一切触れずに と の間を自由に動ける。全員 点の場合と、全員 点の場合では、箱ひげ図はまったく同じなのに、平均は 点以上変わる。
つまり、同じ箱ひげ図から平均が大きくも小さくもなり得る。だから平均の大小は「判断できない」。
「言えない」ことの証明は、反例1つで完了する。集合と命題で学んだ「偽の証明は反例」が、データの読み取りでもそのまま働いている。
ポイント
- 四分位数は「人数の約 ごとの区切り」— そこから人数の下限が保証できる
- 最大値・最小値からは「その範囲の外に誰もいない」ことが言える
- 箱ひげ図から平均値は読み取れない — 中央値と平均値は別物
よくある間違い
- (4)で中央値の大小をそのまま平均値の大小と結論してしまう
- (2)のような人数の保証を「判断できない」としてしまう(四分位数の定義から導ける)
- 「グラフの印象」で正誤を決め、五数要約からの論理で確かめない