運動方程式の立て方 — 物体を選び、向きを決め、力を全部描く
文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月6日
運動方程式 は、力学のすべての出発点です。式そのものは1行ですが、「どの物体について」「どの向きを正にして」「どの力を入れるか」で失点が起きます。とくに、糸でつながれた2物体、滑車、斜面、接触した2物体のように、物体が複数あるときに手が止まる人が多いです。この記事では、運動方程式を立てる手順を固定し、複数の物体があるときの連立のしかたを説明します。
手順1: 物体を1つ選ぶ
運動方程式は、物体1つにつき1本(方向ごとに1本)です。複数の物体があるときは、「まずどの物体について立てるか」を決めて、その物体だけを見ます。他の物体にはたらく力を同じ図に混ぜないのが原則です。
手順2: 正の向きを決めて図に書く
運動の向き(動きそうな向き)を正にとります。斜面なら「斜面に沿って上向き」か「下向き」、鉛直なら「上向き」か「下向き」を、図に矢印で書き込みます。正の向きを決めずに式を立てるのが、符号の間違いの最大の原因です。
手順3: その物体にはたらく力を全部描く
「触れているものから受ける力」(垂直抗力・張力・弾性力・摩擦力)を先に、離れていてもはたらく重力を最後に描きます。この順序で描くと見落としがなくなります。力を1本でも見落とすと、その後の計算は必ず間違えます。力と運動の法則は全32問に力の図を付けてあるので、手本にしてください。
手順4: 運動の方向とそれに垂直な方向に分けて式を立てる
運動の方向には (力の成分の和)、垂直な方向には (力の成分の和)(つり合い)です。斜面上の物体なら、重力を (斜面方向)と (垂直方向)に分解します。垂直方向のつり合いから垂直抗力が決まり、それを使って摩擦力 が決まり、運動方向の式に入る、という順序です。
手順5: 複数の物体は「共通のもの」でつなぐ
2物体が糸でつながれていれば、加速度の大きさが共通で、糸の張力が両端で等しい(糸が軽ければ)、という2つが連立の橋渡しです。物体ごとに式を立てて、共通の と で連立します。力と運動の法則の標準「糸でつながれた2物体を引く」「定滑車でつながれた2物体」、応用「机の端の滑車で吊る」の順に進んでください。
接触した2物体を押す問題(応用の接触した2物体を押す)では、2物体の間の接触力が作用反作用で、大きさが等しく向きが逆です。「一体とみて全体の加速度を求め、次に片方だけを見て接触力を求める」という2段階が定石です。
動滑車があるときは、動滑車につながれた物体の移動距離が、引く側の半分になる(加速度も半分)、という幾何的な条件が加わります。
「一体とみる」と「分けてみる」
複数の物体が同じ加速度で動くなら、全体を1つの物体とみて運動方程式を立てると、内力(張力・接触力)が消えて、加速度が一発で出ます。そのあと、内力を知りたいときだけ、片方の物体を分けて式を立てます。この「まず一体、次に分ける」の順序で、連立の手間が減ります。ただし、2物体の加速度が違う場合(片方が滑る、動滑車がある)は、最初から分けて立てます。
立てたあとの検算
運動方程式を解いたら、次の3つで検算してください。単位(加速度なら )。極限(摩擦係数を0にしたとき、質量を等しくしたとき、角度を0にしたときに、直感どおりの値になるか)。符号(答えの加速度が負なら、仮定した正の向きと逆に動く、という意味で、それが状況と合っているか)。この3つは物理の単位と有効数字にまとめてあります。
運動方程式が広がる場面
円運動では、加速度に を入れて、中心方向の力の和と等しいとおきます。単振動では、復元力 を入れて です。電磁気の導体棒では、電流が受ける力 を入れます。どれも「手順1〜5」は同じで、入れる力が変わるだけです。物理の勉強法の「力学の3本柱」の節に、運動方程式・運動量保存・エネルギー保存の使い分けをまとめてあります。
つまずきやすいところ
最も多い誤りは、静止摩擦力を最初から としてしまうことです。静止摩擦力は「動かないように必要なだけ」はたらく力で、大きさはつり合いから決まります。 は最大値です。次に、作用反作用とつり合いの混同です。机の上の本の重力と垂直抗力はつり合いで、作用反作用ではありません。3つ目は、斜面の角度がどちらの成分に でどちらに かの取り違えです。直角三角形の相似で確かめてください。物理のつまずきマップに、症状別の戻り先があります。