数学C / 平面ベクトル
内積(定義)
問題
、 で、 と のなす角が のとき、内積 を求めよ。
ヒントを見る
成分がないときの内積は、大きさとなす角から出す定義そのもの。 の値を思い出して掛け合わせる。
解答・解説
方針
内積の定義 。 を使う。
解答
⓪ 発想 — どう考え始めるか。 内積には、 つの顔がある。
① 成分の顔(前問)
② 角度の顔(こちらが本来の定義)
この問題では、大きさと角度が与えられている。 だから ② を使う。
を、確実に。
どちらの顔を使うかは、与えられた情報で決まる。
- 成分が分かっている → ① 積の和
- 大きさと角度が分かっている → ②
「 つの表現を持ち、状況で使い分ける」 — これが内積を自在に操るコツだ。
そして、 つを等しいとおけば、角度が求まる。 それが次の問題である。
を代入する。
まとめ:内積には つの顔がある。定義「」と成分「」。大きさとなす角が分かるときは定義を使う。。
発展 — 一歩先へ。 内積の定義 から、有名な不等式が生まれる。
の値は、必ず 以上 以下だ。
両辺に ()を掛ける。
絶対値でまとめると
コーシー・シュワルツの不等式である。
成分で書いてみよう。
乗すると
この不等式は、代数的にも証明できる(差をとると平方になる)。
だがベクトルで見れば、「」というだけの話だ。
幾何的な事実が、代数の不等式を生む。
この不等式は、数学のいたるところに現れる。
変数版。
積分版。
確率版。
すべて、同じ構造をしている。
「内積の 乗 大きさの 乗の積」
関数の空間でも、確率変数の空間でも、"内積"を定義すれば、この不等式が成り立つ。
そして、等号が成り立つのは — 、つまり つが平行( 次従属)のときだけ。
相関係数の も、この不等式の帰結だ。
相関係数は、 つの確率変数の"なす角の "だったのである。
- : 完全に同じ向き(完全な正の相関)
- : 垂直(無相関)
- : 逆向き(完全な負の相関)
統計学の中心概念が、ベクトルの内積として理解できる。
この 行が、幾何・代数・解析・統計を貫いている。
別解
具体的な成分を設定して、 つの顔が一致することを確かめる。
問題では成分が与えられていない。 だが、条件を満たす具体例を作ることはできる。
を、 軸方向に置こう。
は、 から の向きで、大きさ 。
確かめる。
大きさ 、 軸との角が — 条件を満たしている。
では、成分の公式で内積を計算しよう。
! 本解と完全に一致した ✓
つの顔が、同じ答えを返すことが確かめられた。
しかも、この計算からは、内積の意味が透けて見える。
は 軸方向なので、内積は の 成分だけを拾い出している。
の 成分 とは何か。
を 軸に射影した長さ — つまり影の長さだ。
内積 ( の影の長さ)
この「影」のイメージが、内積の本質である。
角度を変えると、影の長さが変わる。
- : 影は (最大) → 内積
- : 影は → 内積
- : 影は → 内積
- : 影は (逆向き) → 内積
内積は から まで、 に応じて連続的に変わる。
この「影の長さ」は、物理の仕事(エネルギー)そのものだ。
力 で物体を だけ動かしたとき、した仕事は
力の向きと移動の向きが同じなら、仕事は最大。
垂直なら、仕事はゼロ。
重い荷物を持って水平に歩いても、物理的には「仕事をしていない」(重力は下向き、移動は水平で、垂直だから)。
疲れるのに、仕事はゼロ。 物理の定義は、ときに直感に反する。
だが、その定義があるからこそ、エネルギー保存則という美しい法則が成り立つのだ。
ポイント
- 。
- 成分の式と定義の式、 通りある。
よくある間違い
- を としてしまう。、
- を掛け忘れて と答える。角度の情報が使われていない
- を超える角のとき、内積が負になることに戸惑う。 なので、内積も負になる