数学C / 平面ベクトル

内積(定義)

★ 基礎内積

問題

で、 のなす角が のとき、内積 を求めよ。

ヒントを見る

成分がないときの内積は、大きさとなす角から出す定義そのもの。 の値を思い出して掛け合わせる。

解答・解説

方針

内積の定義 を使う。

解答

⓪ 発想 — どう考え始めるか。 内積には、 つの顔がある。

① 成分の顔(前問)

② 角度の顔(こちらが本来の定義)

この問題では、大きさと角度が与えられている。 だから ② を使う。

を、確実に。

どちらの顔を使うかは、与えられた情報で決まる。

  • 成分が分かっている → ① 積の和
  • 大きさと角度が分かっている → ②

つの表現を持ち、状況で使い分ける」 — これが内積を自在に操るコツだ。

そして、 つを等しいとおけば、角度が求まる。 それが次の問題である。

公式内積(定義)( はなす角)

を代入する。

xyOab60°
|a|=2, |b|=3, なす角60° → a·b=2·3·cos60°=3

まとめ:内積には つの顔がある。定義「」と成分「」。大きさとなす角が分かるときは定義を使う。

発展 — 一歩先へ。 内積の定義 から、有名な不等式が生まれる。

の値は、必ず 以上 以下だ。

両辺に ()を掛ける。

絶対値でまとめると

コーシー・シュワルツの不等式である。

成分で書いてみよう。

乗すると

この不等式は、代数的にも証明できる(差をとると平方になる)。

だがベクトルで見れば、「」というだけの話だ。

幾何的な事実が、代数の不等式を生む。

この不等式は、数学のいたるところに現れる。

変数版。

積分版。

確率版。

すべて、同じ構造をしている。

「内積の 大きさの 乗の積」

関数の空間でも、確率変数の空間でも、"内積"を定義すれば、この不等式が成り立つ。

そして、等号が成り立つのは — 、つまり つが平行( 次従属)のときだけ。

相関係数の も、この不等式の帰結だ。

相関係数は、 つの確率変数の"なす角の "だったのである。

  • : 完全に同じ向き(完全な正の相関)
  • : 垂直(無相関)
  • : 逆向き(完全な負の相関)

統計学の中心概念が、ベクトルの内積として理解できる。

この 行が、幾何・代数・解析・統計を貫いている。

別解

具体的な成分を設定して、 つの顔が一致することを確かめる。

問題では成分が与えられていない。 だが、条件を満たす具体例を作ることはできる。

を、 軸方向に置こう。

は、 から の向きで、大きさ

確かめる。

大きさ 軸との角が — 条件を満たしている。

では、成分の公式で内積を計算しよう。

! 本解と完全に一致した ✓

つの顔が、同じ答えを返すことが確かめられた。

しかも、この計算からは、内積の意味が透けて見える。

軸方向なので、内積は 成分だけを拾い出している。

成分 とは何か。

軸に射影した長さ — つまり影の長さだ。

内積 ( の影の長さ)

この「影」のイメージが、内積の本質である。

角度を変えると、影の長さが変わる。

  • : 影は (最大) → 内積
  • : 影は → 内積
  • : 影は → 内積
  • : 影は (逆向き) → 内積

内積は から まで、 に応じて連続的に変わる。

この「影の長さ」は、物理の仕事(エネルギー)そのものだ。

で物体を だけ動かしたとき、した仕事は

力の向きと移動の向きが同じなら、仕事は最大。

垂直なら、仕事はゼロ。

重い荷物を持って水平に歩いても、物理的には「仕事をしていない」(重力は下向き、移動は水平で、垂直だから)。

疲れるのに、仕事はゼロ。 物理の定義は、ときに直感に反する。

だが、その定義があるからこそ、エネルギー保存則という美しい法則が成り立つのだ。

ポイント

  • 成分の式と定義の式、 通りある。

よくある間違い

  • としてしまう。
  • を掛け忘れて と答える。角度の情報が使われていない
  • を超える角のとき、内積が負になることに戸惑う。 なので、内積も負になる