公式の覚え方 — 覚える公式と導ける公式を分ける
文: KOSNiZ·最終更新: 2026年9月6日
「公式が覚えられない」という相談は、数学でも物理でも最も多いものの1つです。ただ、実際に見ていると、覚えられないのではなく「覚え方が暗記だけになっている」ことがほとんどです。この記事では、公式を「導出とセット」「使う場面とセット」「単位や図とセット」で覚える方法と、覚えなくてよい公式の見分け方を説明します。
覚える公式と導ける公式を分ける
公式には、「これ以上さかのぼれない出発点」と「出発点から数行で出るもの」の2種類があります。前者は覚える必要がありますが、後者は導けることを1度確かめれば、忘れても復元できます。
三角関数なら、加法定理の6本が出発点で、2倍角・半角・3倍角・積和・和積・合成はすべてそこから出ます。等加速度運動なら、 と が出発点で、 は を消しただけです。漸化式の特性方程式は、 から を引き算すれば「なぜ を引くと等比になるのか」がわかります。
この区別を単元ごとに書き出しておくと、覚える量が半分以下になります。このサイトの各単元の記事(単元ページの先頭)には、その単元で「覚える公式」と「導ける公式」の整理を書いてあります。
導出は「1回だけ手でやる」
導ける公式は、1回だけ、自分の手で導出を書いてください。読むだけでは復元できません。書いた導出は、覚える必要はありません。「導いたことがある」という記憶があれば、試験中に忘れても、5分あれば復元できます。
このサイトの解説では、公式を使う箇所を枠で囲んで示しています(「[[公式]]」「[[定理]]」の枠)。枠に入っている公式を見たら、「これは出発点か、導けるものか」を自分に問い、導けるものなら1度導出を書く、という使い方をしてください。応用の問題には、公式の導出そのものを問う問題(ばね振り子の周期の導出、ヤングの実験の公式の導出、6分の1公式の証明など)も置いてあります。
使う場面とセットで覚える
公式は、「どんな問題で使うか」とセットで覚えないと、試験で引き出せません。正弦定理は「向かい合う辺と角のペアがあるとき」、余弦定理は「2辺と間の角、または3辺があるとき」、相加相乗平均は「和の最小値で、積が定数になる2数があるとき」です。
覚え方として効くのは、公式ごとに「この公式を使う問題」を1問、対応させておくことです。このサイトの基礎12問は、単元の公式を1つずつ確認する構成になっているので、「公式→基礎の該当問題」の対応をそのまま使えます。
単位・図・意味とセットで覚える
物理の公式は、単位から復元できるものが多くあります。速さの単位 m/s は「距離 ÷ 時間」を表していて、 は覚えるまでもありません。仕事率の単位 W = J/s は「1秒あたりのエネルギー」です。物理の単位と有効数字に、単位で公式を復元する方法をまとめてあります。
図とセットで覚える公式もあります。等加速度運動の公式は v-tグラフの「傾きと面積」、積分の6分の1公式は「放物線と直線が囲む面積」、正規分布の標準化は「釣鐘の中心を0に、幅を1に直す操作」です。図を思い出せれば、式が復元できます。
意味とセットで覚える公式は、たとえば の「運動の勢いをエネルギーで測る」、 の「コンデンサーは電荷の水槽で、 が底面積」、 の「電圧 × 電流 = 1秒あたりのエネルギー」です。言葉で意味が言えれば、係数や記号の取り違えが減ります。
覚え間違いが起きる公式
覚え間違いが集中する公式は決まっています。楕円と双曲線の焦点( と )、分流器と倍率器(並列で 、直列で )、 の加法定理の符号(和のときが引き算)、外分点の公式(内分の を に)、閉管と開管の共鳴条件(閉管は奇数倍だけ)、これらは「対」で覚えると取り違えが減ります。
対で覚える公式は、両方を並べて1枚の表にしてください。片方だけ覚えると、もう片方を思い出すときに混同します。このサイトの単元記事には、こうした「対」を並べた整理を、該当する単元で書いてあります。
忘れることを前提にする
公式は、使わなければ忘れます。忘れることを前提に、「忘れたら復元する」手段を持っておくのが、覚え方の本体です。導出、単位、図、意味、対、この5つの手がかりのどれかがあれば、復元できます。
復元の練習は、復習の回し方の「翌日と1週間後の解き直し」の中でできます。解き直しで公式を思い出せなかったとき、解説を見る前に、上の5つの手がかりで復元を試みてください。復元できた公式は、次からは忘れにくくなります。